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誰かのためになりたい、何かの役に立ちたい、という思いはあっても、自分なんか才能もないし、体力もないし、お金もないから、何の役にも立たないと落ち込むことが、私たちにはあります。
そんな思いに沈んだ時に知っておきたい仏教の教えが『無財の七施』です。
財も力も持たないから人の役に立てない、と思っている人でも、周りの人に幸せを届けることはできますよと、お釈迦さまが教えられたのが『無財の七施』だからです。
今日は『無財の七施』の一つである『和顔愛語』についてお話しします。

笑顔は人を幸せな気持ちにさせる

『和顔愛語』とは、和やかな笑顔と、優しい言葉で相手に接することです。
お釈迦さまは「笑顔で人と接しなさい、あなたは周りの人を和やかな気持ちにさせることができますよ。優しい言葉を人にかけなさい、あなたと接する人を温かい気持ちにさせることができますよ」と勧められています。

今はまだ仕事もして、任される任務もあり、必要としてくれる人がいて、誰かの役に立てていると思えても、いつ何が起きて私たちは、オレなんか何の役にも立たない、と落ち込んでしまう事態に陥るかも知れません。
いや、今がそうです、という方もあると思います。

たとえば、病気で長期入院すると、そんな気持ちになりがちです。
仕事ができなくなり、収入もなくなり、いてもいなくても同じ、かえって迷惑をかけるだけの自分の姿に、苦しむ人が多いと聞きます。
その苦しい思いから、つい看護師や見舞いの家族に八つ当たりしてしまうこともあるとか。
気持ちはよくわかります。
自分もそうなると思います。

そんな時にこそ、お釈迦さまの『無財の七施』の教えを、思い起こさなければならないなと思います。
何も持たない人でも、人の役に立てる行いができますよと教えられたことなのですから。

入院していても、仕事する体力はなくても、和やかな笑顔と優しい言葉で看護師さんや家族に接する『和顔愛語』はできます。
看護師はきつい仕事で離職率も高い職業です。
患者のお世話をしたいという高い志で看護師になっている人が、自信を失い、嫌になって辞めてしまうのは残念なことです。
その続けられなくなる原因の一つに挙げられるのが、患者が怒りや冷たい態度で接してくることへのストレスです。

患者であるこちらが、笑顔で接するように心がけ、「大変ですね」「いつもありがとう」と優しい言葉をかけると、看護師は励まされた気持ちになり、仕事に誇りと自信を取り戻し、がんばろうという気持ちになります。
看護師にとって、患者の和やかな笑顔と優しい言葉が、生きる力になることもあるのです。

見舞いに来た家族にだって、何の役にも立たないことはありません。
私の友人で、小学生の時、お祖母ちゃんの入院しているところへ見舞いに行くのが大好きだったという女性がいます。
その理由は、忙しくて親も聞いてくれない自分の学校の話をいつもニコニコ聞いてくれて、図画工作で金賞を取った時はすごく喜んで、ほめてくれて、そういう一つ一つのことがうれしかったからと言っていました。
入院して1年後に亡くなられたそのお祖母ちゃんは、孫に大きな幸せを、入院先から届けていたのですし、その温かい記憶は、今の彼女の心を支え続けています。

何の役にも立たないからと仏頂面になり、周りに壁を作って孤独になるか、そんな中でも和顔愛語に心がけ、周りに幸せを届ける存在になれるか、『無財の七施』は、苦境の時こそ知っておきたい、お釈迦さまの教えです。

 

赤ちゃんの笑顔は最強の幸福ツール

「笑顔」は人を幸せにする布施行のひとつと仏教では説かれていますが、中でも赤ちゃんの笑顔は最強です。

先日、勉強会に赤ちゃん連れのお母さんが来られました。
ぐずついたりすると困る場合もあるのですが、ご機嫌が良かったのか、ニコニコしてて、その笑顔が可愛いったらなかったです。
なんで赤ちゃんのニコッとした無邪気な笑顔って、あんなに幸せな気分になるんでしょうね。

「子供のほほえみはお金で換算すると、一六〇〇〇ポンド(約三百二十万円)以上、チョコレートバーで二千本くらい」。
そんな実験結果を、イギリスの科学者が公表して話題となったことがあります。
調査は、対象者に様々なものを見せ、その時の脳波や心拍数の変化を測定したものらしいです。

平安の古典『竹取物語』にも、竹から生まれた赤ちゃん(かぐや姫)を育てる老夫婦の姿をこう描いています。
「どんなに苦しいことがあっても、この子の顔を見ると、心がいやされ、苦しみもなくなってしまう。腹が立った時も、子供と接すると、心が穏やかになって、怒りも消えてしまうのだった」

子供の愛くるしい笑顔を守らなければ、という深い慈愛が、疲れも吹き飛ばせて働かずにおれなくするのでしょう。
子を持つ親の気持ちは、昔も今も変わらないものです。

 

笑顔を大切にしてきた日本人

ご存じのように「和」という漢字は、和風、和室、和歌と使うように、日本を指す字です。
同時にまた「和」という字には、聖徳太子が十七条憲法の第一条で「和するをもって貴しとす」“仲良くすることが素晴しいことだ”と定めたように、仲良くする、団結、という意味もあります。
さらに「和」には、「和(なご)やか」という意味があります。

仏教の『和顔愛語』とは、和やかな笑顔と、優しい温かい言葉で相手に接することで、お釈迦さまは「素晴しい行いですよ」と勧められています。

江戸時代、各村にある寺を中心に、子供の教育も、村の寄り合いも行われた時代、仏教の法話は各村々でひらかれ、お釈迦さまの「和顔愛語」の教えは、今よりずっと人々の間に浸透していました。
その「和顔愛語」の文化は、現代の日本にも受け継がれていると思いますし、今後とも大事にしていきたく思います。

先日、アメリカから一時帰国した友達が、空港での入国審査の対応で「日本人はやっぱり丁寧だ」と言っていました。
「お疲れさまでした」と笑顔で案内されて感激したのだそうです。
日本にいると、当たり前に思える客への対応ですが、確かに比較すると、際立っているのがわかります。

私もアメリカに2年間滞在した経験から、スーパーのレジでも、郵便局でも、何しろ無愛想でぶっきらぼうな対応に最初、面食らったものです。
ファーストフード店では「Here? To go?」と彼らは聞いてきます。
日本なら店員が明るい声で「お持ち帰りですか?それとも店内でお召し上がりですか?」と同じことを聞いてくれますが、彼らの「Here? To go?」は、とてもそう言われている感じではない、「持ってく?食ってく?」って感じです。
フレンドリーと言えばそうなのかも知れませんが、フレンドリーな言い方でもないような。
というのは、笑顔で聞いてくるわけでもない、つまらなそうにぼそっと聞く感じなので。

日本の、笑顔や言葉を大事にする文化は、昔から育まれていたもののようで、それは幕末や明治の初めに来日した欧米人の残した記録の数々からも知られます。
彼らが本国に送った記録、あるいは私的に残した日記は、当時の日本を知る大変貴重な資料です。
そこには日本人の中では当たり前になっていて、とりたてて記録もしないような習慣、風俗の数々が、写実的に書き記されてあるからです。

その文献で多くの欧米人が感銘を受けていることの一つが、日本人の「ほほえみ」のすばらしさです。
両国の川開きの混雑の際でも「ありがとう」「ごめんなさい」と優しい言葉が飛びかったとか。
このようなあいさつは明るい笑顔とともに発せられ、自分たちを魅了した、と書かれてあります。
「質素な生活の中でも笑顔の耐えない国民だ」
「不機嫌でむっつりした顔には、 ひとつとて出会わなかった」
と書き遺しています。

今、日本は毎年、外国人の観光客数が過去最高を更新し、2020年にはオリンピックも控えますが、これからも「和やかな笑顔と優しい言葉」和顔愛語の文化で、世界から一目置かれる日本であったらいいなと思います。
『和やかな笑顔で、和を大切にしている和国、日本』で外国の人をお迎えしましょう。

 

まず笑顔してみることの効用

辛いことがあって笑顔になれない時はどうしたらいいでしょうか。

心は形に表れますが、形が心を作るケースもあります。
本来、朗らかな心が、笑顔や言葉に表れるのですが、笑顔と言葉に心がけることで、朗らかな心になる、ともいえるのです。

両親は1歳のときに離婚。
その後、父親はアルコール依存症によって死去。
歌手だった母親は、声が出なくなり、仕事ができなくなる。
新聞やマーケットの売り子を経験し、パントマイム劇で、一家の家計を支える。
やがて母親は極貧のあまり、精神に異常をきたし、施設に収容される。
4歳違いの異父兄と、孤児院や貧民院を転々とすることになる。。。
こんな少年時代を送ったのは、かの喜劇王チャップリンです。
こんな言葉も残しています。
「人は楽しいから笑うんじゃない、泣かないために笑うんだ」

こういう人だったからでしょう、チャップリンの笑いは、涙が出そうになるような、悲しい人間の姿も垣間見えるのですが、その悲しみを優しく包む笑いです。

チャップリンが作った「SMILEという曲に、それをこう歌っています。
マイケル・ジャクソンが「最も好きな歌だ」とカバーしたことでも知られています。

和訳の歌詞を紹介いたします。

ーーーーー

心が痛むときでも、微笑んで
傷ついたときでも、微笑んでごらん
曇り空のときも、君ならきっと切り抜けられるよ

悲しみや不安を感じるときでも、笑ってごらん
そうすれば明日君の為に太陽が輝きだすよ

君の顔に喜びで笑顔にしよう
悲しみの跡を全部隠して
たとえ涙が今すぐにでもこぼれそうだとしてもね

そんなときこそ、微笑みを絶やさないようにしよう
笑って
泣いたってなんにもならない
もしも君がほほ笑んだなら
人生は生きる価値がまだまだあるってことがわかるだろう

ーーーーーー

チャップリンは笑いの力を信じ、生涯をかけた人でした。

顔だけでも笑うと、気分まで明るくなる現象を、医学では「バイオフィードバック」と呼ばれます。
「笑顔」はプレッシャー克服の有効な手段なのだとか。
心の底から笑えない時は、形だけでもいいそうです。
失意の時、緊張が続く時、あえて口角を上げて、笑った表情を作るだけで、脳が影響を受け、考え方がよりポジティブになるとのこと。
ポジティブになることで前頭葉が適切に働き、プレッシャーがかかっていても、やるべきことに集中できるそうです。

鉛筆をハーモニカのように横向きにして口にくわえると、笑顔に近くなります。
鉛筆を縦向きにしてストローのように口にくわえると、不満顔に近くなります。

大学生に鉛筆をくわえたままマンガを読んでもらい、面白さを感じる度合いを評価してもらったところ、横向きでくわえた時は、縦向きに加えた時よりも面白さを強く感じる、という研究結果があります。

フランスの哲学者アランは
「しあわせだから笑っているのではない。むしろ笑うからしあわせなのだ」
「ただほほ笑むまねをしただけでも、すぐに人間の悲しみや退屈さはやわらいでいるのだ」
といいます。

『和顔愛語』(和やかな笑顔と優しい言葉)は、周囲を和ませ、穏やかな空気を生み、失意の人を励ます力もある素晴しい行いですが、
それだけではなく、笑顔で人に接しようと努めている自分自身が大きな幸せを手にできますよ、とお釈迦さまは説かれています。

自らを幸せにし【自利】、人を幸せにする【利他】、
自利利他の布施行が『和顔愛語』なのです。

 

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